ごあいさつ


  第30回日本老年脳神経外科学会会長
森田明夫
(日本医科大学 脳神経外科学 大学院教授)

この度、第30回日本老年脳神経外科学会を平成29年4月21日に東京で主催させていただくことになりました。日本医科大学脳神経外科の教室員一同大変光栄に存じており、鋭意準備を進めているところでございます。

ご存知のように日本は世界各国の中でいち早く超高齢社会を迎えています。さらに高齢者の割合は増加する見込みであり、2030年には65歳以上の高齢者が人口の1/3を超える見込みとなっています。特に脳神経外科や脳卒中のケアを受ける患者さんには高齢者が多く、病棟に入院している患者さんの平均年齢は70歳を超えることが普通となってきております。

以前より高齢は脳神経外科手技のリスクファクターの一つと見なされており、高齢者手術のへの対応は適応、手技、麻酔、術後管理を含め、特殊な対応が必要であります。本学会はこのような医療の特殊性を鑑み30年前に世界にいち早く構成され、多くの知見を残してまいりました。いかに高齢者の脳神経外科疾患の予後を改善するかは重要なテーマであり、今後健康で社会に貢献できる高齢者を維持してゆくことは社会にとって喫緊の課題でもあります。

また昨今は、単に暦年齢だけではなくフレイル、サルコペニア、ロコモティブ症候群など実質的な高齢化を示す概念も提唱されており、このような観点を脳神経外科の医療にも組み込んで行く必要性があります。

そこで本学会ではテーマを『老年脳神経外科における科学と実践:ガイドライン構築をめざして』といたしました。老年、高齢の外科領域における定義やこれまで明らかとされているリスクファクタ−の整理をし、特殊な配慮を要する老年を対象とした脳神経外科医療の指針となるようなエビデンスの構築をめざしたいと考えております。一般の演題および教育講演などにより高齢者医療にかかわる重要な情報を共有することのほか、様々な脳神経疾患の診療に関するエビデンスをまとめ、診療指針をまとめてゆく準備をしてゆくためのセッションを組む予定としております。

会場は神保町の学士会館を設定しており、皇居にもほど近く、また古書店街など散策に適した環境でもあります。4月の快い風を感じられると思います。ぜひご参加いただき、老年脳神経外科学の発展のために先生方のご研究、臨床の成果をご発表いただければ幸いと存じます。

2016年6月吉日